研究概要 |
○本研究の基礎となるのは潤滑油の高圧物性であり,その結果は以下の通りである. 「打撃圧痕法による瞬間的高圧条件下の潤滑油レオロジー研究」 潤滑油準静的条件下(加圧時間,1000s程度)の研究により,無定形またはガラス質として固化することは著者らによって確認されているが,転がり軸受やt-CVTのような動的高圧条件下(加圧時間,1ms以下)での潤滑油の固化現象は十分解明されるまでにいたっていない.著者らは,潤滑油を介した鋼球と平板の打撃時のAE(アコースティックエミッション)波形観測,油膜形成状態の観測,および塑性圧痕の精密計測を基に,瞬間的高圧条件下(加圧時間,0.15ms)での潤滑油の固化現象を確認した.また,加圧時間0.15msにおいても,準静的条件下で作成した状態図が適用できることを明らかにした.この結果は,「14^<th> International Colloquium Tribology, Stuttgart,2004」で公表した. ○t-CVT停止時の損傷防止法の確立 運転停止過程のEHL油膜干渉縞をデジタル高速度カメラで撮影した結果,その挙動は運転停止直後の油膜厚さと閉じ込め油膜の流出過程(スクイズアウト)の二つに大別されることが分かった.まず,EHL運転停止直後の閉じ込め油膜厚さについては,粘度圧力係数αと絶対粘度ηの積αηで油膜厚さが整理できることを実験的に見出し「日本機械学会九州支部講演会2003.3」で公表した.また,減加速度aの影響をも考慮した結果,αηaによって閉じ込め膜厚が規定されることを「トライボロジー会議2003,秋,新潟」で公表した.したがって,運転停止直後の油膜厚さについてはほぼ初期の目的を達成したことになる.なお,この結果は,転がり軸受,歯車など停止時の油膜厚さの推算にも適用でき,更なる展開が期待できる.
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