研究概要 |
「手擦れ機構の解明に関する研究」の本年度における実績の概要は以下のとおりである。 1)銅及び銅合金と手指による摩擦試験をおこない、摩擦係数は銅及び銅合金の表面あらさや指剛性に依存し、平滑な材料表面を「引き」摩擦するときが摩擦係数は大きくなり、指先が適度の発汗状態のとき最大の摩擦係数となることがわかった。 2)指との接触面積をS,押付け荷重をPとした場合,接触面積のうちのαの部分が面圧に関係なくせん断をうけ、残りの部分はクーロンの法則に従うとすれば、摩擦係数f=c_1αS/P+c_2(1-α)となり、実測結果とよく一致することを見出した。 3)摩耗粉分析に関する研究で、軟質金属(インジウム、鉛、スズ、銀、アルミニウム)との指摩擦試験において、指で摩擦されたこれら軟質金属表面には筋状痕が発生することは従来研究でも明らかであった。今回、純銅表面の指摩擦によって発生した摩耗粉をX線分析したところ金属性の摩耗粉であることが判明し、これは指角質層によって除去された摩耗粉であることがわかった。 4)微粒子(40ミクロン)を投射したステンレスや純銅試験材料について、指先接触による感性評価をおこなった。その結果、微粒子投射面は、鏡面仕上げ面よりも低摩擦係数を示し、油とのぬれ性もよく、接触感覚にすぐれていることがわかった。 5)生体液粘度と摩擦特性との関連研究で、ヒアルロン酸水溶液(HA)やナガイモのような曳糸性液体の低摩擦係数を確認し、粘度シェアレイドが増すと急減することを見出した。
|