本研究の目的は、(1)真実接触面積を実時間で観察できる、荷重負荷装置を備える接触面顕微鏡を製作し、(2)真実接触面積の測定および既存の密封特性実験装置を使って、軟らかい旋削面(真空焼鈍銅)と硬い平面からなる、静的メタルシールを想定した接触機構を解明し、(3)密封に必要な臨界押付け力を予測し、密封面の最適形状と表面性状を提言することである。以下、得られた結果を列記する。 (1)接触面顕微鏡の測定方法と測定精度 (1-1)測定方法は、焦点距離が異なる接触面画像を数十枚の顕微鏡画像に分解して、さらにそれらを合成することにより、1枚のピンぼけしない剛性接触面画像を得る。 (1-2)真実接触面積の測定精度は、光源にランダム偏光を用いた場合、押付け荷重10〜200Nの範囲で約20%である。 (2)微細接触部の観察結果 (2-1)濃淡画像より、微細接触部すなわち真実接触部の弾・塑性変形過程が観察された。密封の観点からすれば、真実接触していない箇所すなわち漏れ通路の形成過程が観察された。 (2-2)2値画像より、接触長さ、真実接触面積および塑性流動圧力が算出された。真実接触面積については、接触圧力の増減による真実接触面積の履歴が得られた。密封の観点からすれば、真実接触面積の履歴は漏れ通路形成の履歴を表わすものであり、静的メタルシールの応力緩和による漏れ量の急増領域(危険領域)を示す。 (3)密封特性実験において、旋削痕に沿った渦巻き状の漏れ通路を矩形直管に置換し、ガスの流れを粘性層流と仮定して漏れ量計算を行い、密封に必要な接触圧力および臨界押付け力を予測した。 (3-1)接触圧力がある範囲(40〜100MPa)において、漏れ量の計算値と実験値はほぼ一致した。 (3-2)接触幅が1〜4mmの範囲において、ガス漏れ量が10^<-5>L/h以下にするのに必要な臨界押付け力の実験値と計算値はほぼ一致した。
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