水滴の衝突によって沈下・変形する水面の中央底部先端から空気泡がくびり取られ、水中で振動を始めることにより周囲に過渡音響が放射される。水滴の直径および水面衝突速度に依存しながら空気泡が必ず形成される「気泡のレギュラー取り込み」条件を確認し、気泡のピンチ・オフ前後の瞬間写真と水中音響の同時測定を行った。 一方、気泡の取り込みが確率的に起こるとされる「イレギュラー領域」の条件は、水滴直径が大きく、また衝突速度が大きい条件に対応しており、これは江戸時代から日本庭園に伝統的に設置されてきた水琴窟の音発生条件と密接に関わっている。この「イレギュラー領域」では、主滴のあとから落下する小滴が回復状態にあるくぼんだ水面底部に衝突することによって、その時随伴される空気層の分離を引き起こし、その結果生じた空気泡の振動により音(第2気泡音)が発生する。空気層の分離条件として水面の回復状況や小滴の水面衝突のタイミングが問題となる。そのため、この空気層の分離に基づく気泡音の発生条件(水滴直径、衝突速度)の範囲は非常に限定されている。しかし、主滴が水面に衝突してから気泡音が発生するまでの時間は安定しており、制御の観点からは水琴窟の音源として利用できると考えられる。水滴のポテンシャルエネルギーが大きくなると、第2気泡音発生の後に、さらに第3の音発生がある。これは、スプラッシュが沈下して水面が回復するときの水面波動が中央部に水柱を形成・発達させ、それが表面張力波で分裂することによって生じた大きな水滴が水面に衝突して空気泡を取り込むことと関係している。これと水琴窟の音源との関わりについては更なる検討が必要である。 以上の成果の一部は既に国内の講演会で発表済みであり、また他の部分については2003年7月ハワイで開催される日米流体工学会議で発表する予定である。
|