本年度においては、第一段階として、高レイノルズ数における検証を目的としてレイノルズ数が150程度の非圧縮性一様等方性乱流のDNSデータの生成を行った.格子点数は512×512×512とし、計算には大阪大学サイバー・メディア・センター設置のSX-5を利用し、ベクトル・プロセッサーの並列化を行うコードを開発した.研究経費その他中の計算機使用料は、この使用料に充てられた.第二段階として、このDNSデータにフィルター操作を施すことにより、Subgrid-scale(SGS)応力テンソルの厳密値を算出し、SGS応力とストレイン・レイト・テンソルの固有ベクトルの平行度の検証を行い、両ベクトルが強い非平行性をもつ事を示した.次に、SGS応力テンソルに非線形モデルを用いた分解を施すことにより、非平行な関係を引き起こす主たる要素を特定した.この要素が、特にストレイン・レイトと渦度が同等な強度をもつflat sheet領域で大きな強度を有し、このため、flat sheetのvortex tubeへの変換過程に大きな影響を与えることを示した.第三段階として、この要素の乱流生成における役割を明らかにするために、この要素の係数の符号を反転させた非線形モデル(variant model)を実際のLES計算に導入して検証し、variant modelにおいてはsheet-tube変換の発生の抑制、したがって、乱流生成の削減が起きる事を示した.次に、このvortex tube構造の生成削減が、粘弾性流体における乱流抵抗削減現象に類似なことに着目して、粘弾性流体にたいするOldroyd構成方程式と非線形モデルの対応関係を解析し、variant modelがOldroyd構成方程式の近似解と相似な事を明らかにして、Newton性流体のSGSモデルとしては非線形モデルが、粘弾性流体のモデルとしてはvariant modelが適切な事を示した.
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