研究概要 |
相変化に伴う非定常から定常への流れ場およびそれに伴う衝撃波、膨張波等の波動の伝播挙動をも含めて、通常の「流体力学的レベル」で定性的にも定量的にもきちんと扱えるシミュレーションソフトウェアーの開発を行う。つまり、本来立脚すべきボルツマン方程式系に基づく定式化を使用せず、それと等価な所謂「流体力学的定式化」(ナビエ・ストークス方程式系+気体論解析から導出された凝縮相界面での適切な条件)に基づくフトゥェアーの開発である。これによって、種々の流れ揚はその本質を見逃すことなく比較的容易に解析可能となる。この目的に対して、新たな問題、つまり、凝縮相が内部構造(例えば、温度場等)をもつ場合に、その内部構造が流れ場にどのような影響を及ぼすのかについての解析の必要性がでてきた。そこで、まづ、この内部構造を適切に取り込めるように流体力学的定式化をやり直し、これに基づいてソフトウェアーの改良・改善を行ない、相変化に伴ういくつかの流れ場に対して内部構造の与える影響を調べてみた。当然ながら、ボルツマン方程式系に基づくシミュレーション結果と定性的にはもちろんのこと定量的にも良好な一致が見られる。それらの結果については、関連するものも含めて一部ではあるが、既に第23回国際希薄気体力学シンポジューム(2002年7月Whistler, British Columbia, Canadaにて開催)で2つの論文発表を、また国内では、日本混相流学会年会講演会2002、宇宙航行力学シンポジューム2002(宇宙科学研究所開催)および第16回数値流体力学シンポジュームでそれぞれ2件づつの研究発表を行なっている。今後は、凝縮相が内部構造をもつような場合も含めて、この「流体力学的定式化」とこれに基づくシミュレーションソフトウェアーを当初の目標に向かって強い蒸発・凝縮過程による流れ場へも適用可能とすることである。現在のところ、凝縮相が内部構造をもたない場合ではかなり進んでいるが、内部構造をもつ場合に対しては悪戦苦闘中で、残念ながら未だ満足し得る結果が出ていない状況である。
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