研究概要 |
翼が地面に近付くと,流体の粘性を介して相互に強く干渉する.従来の風洞実験では風洞壁と翼は相対的に静止しているので,流体との相互干渉は実際の走行時とは異なり正しく空力性能を評価することはできない.本研究では,初年度において回転式の曳航装置を設計、製作しその性能評価を行なった装置について,初期の目的である揚力の測定を精度良く行なえることを確認した後,具体的に地面に文様を付け,これが揚力の増加に与える影響を明らかにした.最終的には,日向市のJR総研のリニアー実験線を利用した曳航方式の実験を行なうが,その為の基礎データを得ることを目的に,東北大学・宮崎大学共同研究施設の500mの測定区間において3種類の翼型について翼表面の圧力分布を計測することによりその空力特性を明らかにした.また,その実験の妥当性を理論の立場から検証することを目的に,境界層近似とポテンシャル理論を併用した解析を行なった. (1)上下可能な地面:内径600mm,外径1,000mm,厚さ15mmのアルミ製の円板を3個のステッピングモータで上下動させる.移動精度±0.2mmの精度を確保できた.地面に文様を加える為に,幅2μmの溝を19本掘ってある.翼に働く揚力を計る天秤及び翼型:翼型は,弦長100mm,翼幅200mmのNACA4412翼型,材質はバルサー材である. (2)高さ2nmの紙を地面に幅1cm間隔で円周状に配置し,翼の地面高さ及び迎え角を変化させて揚力を測定した.その結果,翼後縁の地面高さが弦長の20%以下に近付くと揚力の増加傾向が増すこと,また,その傾向は迎え角が小さいほど顕著であることが明らかとなった. (3)直線コースでの地面文様の影響を見るための前段階の実験として,東北大学・宮崎大学共同研究施設において500mの直線の測定区間において,NACA4412,NACA6410+6,NACA6410-6の3種類の翼型について曳航実験を行なった.これにより,地面文様の効果を引き出すには,翼腹面のラム圧が高くなるNACA6410-6翼型が適していること示唆する結果を得ることができた.
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