研究概要 |
本研究では,磁性流体中に形成される鎖状クラスター構造と超音波伝播特性の関係を明らかにする事を目的として以下のように研究を遂行した。 (1)新装置を作成し,1MHz,2MHz,4MHzのセラミック振動子を用いて磁性流体中の音速の計測を行った。また,水ベースとケロシンベースの2種類の磁性流体を用いた実験を行った。 (2)水ベース磁性流体中の音速変化におよぼす周波数の影響はあまり見られなかった。しかし,ケロシンベース磁性流体においては,周波数の増加に伴い,音速も大きくなった。これは,鎖状クラスター形成の形態が両者において異なるためと考えられる。 (3)各印加磁場強度において,磁場の印加方向と超音波の伝播方向とのなす角度φを変化させて,音速の異方性に関する実験も行った。その結果,φ=0°の時に音速は最大になり,φ=90°の時に音速は最低となる一般的傾向が見られた。しかし,これは,磁場強度やベース液の違いによってこの傾向が見られない場合もあった。これについては,今後の検討が必要である。 (4)鎖状クラスター形成と音速変化との因果関係を調べるために,印加磁場下での鎖状クラスター可視化システムを構築した。この鎖状クラスターは,時間経過と共に太く長く成長していく。そこで,鎖状クラスター成長を定量的に評価する手法を検討した。その結果,視野の明度の標準偏差によって,ある程度鎖状クラスター成長が評価できることがわかった。 (5)この評価方法を用いて,鎖状クラスター成長と音速変化の定性的な関連は見い出せたが,まだ不明な点が多く,この関連性の解明が今後の課題と考えている。
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