研究概要 |
本研究は,遊泳用プールなどで児童が排水口に吸着されるという事故を未然に防止するため,流体自身の流れで吸引力を制御できる渦室付排水管を研究開発するものである.本研究では,提案する渦室付排水管の実用化を念頭において,渦室付排水管の形状パラメータが流体抵抗や吸引力特性に及ぼす影響を解析すると共に,排水管の形状を最適化するための指針を得た.また,渦室付排水管内流れの理論モデルについても検討した.本研究で得られた主な知見を以下に示す. (1)吸着時の吸引力は流量に強く影響され,流量が減少するほど吸引力が小さくなる.したがって,通常時の流れ状態から吸着状態になった時に,流量が大きく減少するような形状が望ましい. (2)吐出し管径(De)を太くすると,通常時の流れ損失は減少するものの吸着時の吸引力が増加する.つまり,吐出し管径は,通常流れの損失低減および吸着時の吸引力低減という最適化の課題に対して相反する傾向を示す.本研究の範囲では,渦室直径(Dv)との比で言うとDe/Dv=0.22程度が流れ損失と吸引力のバランスが良かった. (3)渦室の厚み(L)を増加させると,通常時の流れ損失低減効果は大きいものの,吸着時の吸引力が増加する傾向が認められた.本研究では,渦垂直径との比で示すとL/Dv=0.3程度が良好であった. (4)吐出し管入口の丸み半径(R)については,本研究では渦室直径との比でR/Dv=0.13程度の丸みを付けてベルマウス形状にして実験した.この場合には吸着時の吸引力をあまり増加させることなく,通常時の流れ損失を低減できることが分かった. (5)理論解析では,まず渦室内圧力分布を実験的に計測し,自由渦と強制渦の組合せ渦に近いものであることを確認した.また,実験において,渦巻き流れの中心部に空気柱を持つことが認められた.これらの実験的知見より,理論解析においては,流れモデルとしてランキンの組み合わせ渦の中心部に空洞を持つ解析モデルを考案し,流れ特性の計算法を導出した.
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