研究概要 |
本研究では、超音速不足膨張噴流が垂直壁および傾斜壁に干渉する場合に流れ場内に形成される波動および形成される波動と壁面上の温度分布との関連を明らかにすることを目的として、流れの可視化実験、感温液晶とサーモグラフィーによる壁面上の温度分布の計測およびTVD法を用いた数値計算を行った。得られた結果をもとに、流れ場の中に発生している再循環領域についての調査などを行った。 得られた結果を要約すると以下のとおりである。 (1)流れ場内の波動や壁面上の圧力と温度分布に強い影響を与える再循環領域に対する,流れ場の圧力比(貯気圧と背圧との圧力比)とノズル出口から壁面までの距離(壁面の設置位置)の影響を定量的に明らかにした。本研究条件下では,流れ場の圧力比が増加するほど,ノズル出口から壁面までの距離が減少するほど再循環領域による影響が顕著に現れる。 (2)垂直壁との干渉の場合,壁面の中心(ノズル中心軸との交点)における温度が最も高くなるが,再循環領域が形成される場合は温度が最も高くなる位置が変化し,'壁面の中心における温度は流れ場の圧力比が増加するほど,ノズル出口から壁面までの距離が減少するほど低下する。また,流れ場内に形成される垂直衝撃波の位置と直径についても垂直壁の影響により自由噴流の場合と比較して変化する。 (3)傾斜壁との干渉においては,流れ場の圧力比とノズル出口から壁面までの距離が特定の条件下にある場合に上部波尾衝撃波の壁面との干渉点近傍に境界層の剥離が観察され,これに起因した温度変化が壁面上に現れる。境界層の剥離は再循環領域の形成によるものと推測される。
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