研究概要 |
本年度は,半円状に凹んだ壁面に液噴流を衝突させ膜厚の測定を行って,平壁面に衝突させた場合との比較を行った。実際のエンジン用シリンダー内での燃料噴流の壁面衝突などでは,平壁面よりは曲壁面に衝突する場合が多く,衝突微粒化においても液噴流を曲壁面に衝突させることによって,噴霧流の形状や諸特性の空間分布を制御できるなど,燃料噴射弁の機能性を高めることが可能となる。 まず,曲壁面上の液膜の厚さを触針法を用いて測定した。壁面と液噴流との衝突角度,液噴流のレイノルズ数,衝突点から下流方向への距離ならびに液膜流の中心線からそれに直角な方向への距離を変えて,膜厚測定を行った。その結果,膜厚に対する衝突角度,液噴流のレイノルズ数,衝突点からの距離の影響については平壁面の場合と同様であることが分かった。また,液膜流の中心線からの距離に対する膜厚の変化については,中心線から離れるにつれて膜厚は一旦減少し,最小値をとった後増大に転ずる傾向は平壁面の場合と同様であるが,膜厚の絶対値については,曲壁面の場合が平壁面の場合の約2倍であることが新たに分かった。その原因として,テイラー・ゲルトラー渦の発生が挙げられる。流れ方向に凹の曲率を持つ壁面に沿って流体が流れると,遠心力の作用により境界層が不安定になりテイラー・ゲルトラー渦が発生することが知られている。その指標となる,ゲルトラー数が6〜9の範囲で渦が発生するとされている。そこで,理論解析結果から,衝突点から測定点まで流れに沿ってゲルトラー数の最大値を計算すると,6〜9の範囲に入り,渦が発生する可能性があることが分かった。渦が発生するとエネルギーが消散し,速度が減少して膜厚が厚くなる。これらの結果から,液噴流が曲壁面に衝突し液膜が生成すると,平壁面に比べてその膜厚が厚くなり,分裂して噴霧になると特性が悪化することが明らかとなった。
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