研究課題
基盤研究(C)
本研究では、2成分溶液内での凝固過程の動的挙動に着目し、そのプロセス(固化領域の厚さ及び凝固速度)を制御するために、簡便でかつ実用的に十分な精度を有する非定常一次元凝固解析モデルを提案することを目的とした。2成分溶液内での凝固はマッシー層(一種の多孔質層)を形成するため、まず水で飽和した多孔質層内での凝固過程について検討した。冷却面温度を変化させた時の固相厚さの変動について1次元モデルを提案し、2次元数値シミュレーションと実験結果と比較して良く一致することが確認できた。1次元モデルは液相域で対流が活発な場合も熱伝導が支配的な場合も共に凝固層の厚さ変動をよく説明することを確認した。次に2成分水溶液を用いた凝固現象について検討を行なった。18cmx18cmx18cmの矩形水槽と硝酸ナトリウムを用いた室内実験を併せて行い、同モデルの妥当性を検証した。境界条件は上方冷却と下方冷却の二種類について実験と解析を行なった。上方冷却の場合は水溶液の密度分布は不安定となり、活発な自然対流が発生する。また、固相の成長に伴い溶質の排出があるため、液相内ではほぼ一様に濃度が増加して行くのが認められた。これは液相部が自然対流により活発に撹拌されていることを示している。実際液相内での鉛直方向温度分布は典型的な逆S字形となっており、温度差に基づく対流が支配的であることが確認できた。また、固液界面の不安定現象により固相は針状結晶の集合体でマッシー層を形成することになる。マッシー内の固相率が一定であると仮定して鉛直方向の1次元モデルを提案し、固相成長の経時変化を精度良く予測することが出来た。下方冷却についても同様のモデルを提案し、下方冷却面から成長する固相(マッシー層)の成長を予測することが出来た。さらに地中熱交換器の集熱量予測に関連して、鉛直円柱周りの凝固と自然対流を解析した。最後に対流熱伝達が関与する1次元凝固モデルと同様の考えに基づいて、熱伝導と対流が同時に存在する連成熱伝達問題を検討し、有限の熱伝導率を有する壁が2つの温度の異なるレザバーを隔てている時の平均熱流束を予測する簡便なモデルを提案し、実験によりその有用性を確認した。
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すべて 雑誌論文 (12件)
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