(1)多成分流体の核沸騰熱伝達係数は、成分流体の熱伝達係数にモル分率の重みをつけて算出した理想値に比べると、常に低い値をとる.多種類の二成分混合液と三成分混合液について核沸騰熱伝達の実験データを測定し、熱伝達係数の理想値に対する実際の熱伝達係数の低下率を検討した.その結果、熱伝達係数低下率の濃度依存性は、相平衡図上の気液濃度差よりも、露点温度と沸点温度の差、すなわちボイリングレンジと相関があることを見出し、ボイリングレンジを導入した熱伝達係数の無次元予測式を得た.熱伝達係数低下率の濃度依存性がボイリングレンジに関係する機構としては、気泡界面では低沸点成分が優先して蒸発するため、伝熱面近傍の低沸点成分濃度がバルク液中の低沸点成分濃度よりも低下し、その結果として沸点温度が上昇し、伝熱面温度との間の有効温度差が低下するためと結論した. (2)性質の異なる七種類の二成分流体について、大気圧のプール沸騰条件下の限界熱流束(CHF)を測定した.取り上げた性質は、相平衡図の露点曲線と沸点曲線の開度、物性値の濃度依存性の非線形性、水性混合液、有機混合液、共沸混合液、非共沸混合液、ポジティブ混合液、ネガティブ混合液、である.測定したCHFデータの濃度依存性を検討したところ、ポジティブ混合液のCHFは成分純液のCHFの内挿値より増加し、ネガティブ混合液のCHFは低下することから、合体二次気泡と伝熟面のあいだに形成される楔状の液膜に作用するマランゴニカがCHFの支配因子と推論し、無次元特性数として新規にマランゴニ数を定義し、クタッテラーゼ数で規格化したCHFをマランゴニ数で相関することにより、CHFの無次元整理式を得た.
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