研究概要 |
水平管群吸収器は、各種の化学反応プロセスや熱・物質移動プロセスで広く利用されている。本研究では、水平管を濡らして流下する液膜上に生成される表面波の運動とそのガス吸収促進機構の解明を目的として、平滑表面の液膜流れと各管頂の液膜入口部での完全混合を仮定した層流拡散理論モデルを構築するとともに、実験による観察、測定を行った。理論モデルから、小さな管径の場合は濃度境界層が薄くガス吸収速度が大きいことを予測し、実験結果はその傾向を裏付けた。実験観察によれば、水平管上の液膜には上段からの滴落下により表面波が生じるとともに、液膜流れは管軸方向に片寄りが生ずる。低流量では、後者による負の影響が強く、ガス吸収速度は小さいが、流量の増加とともに前者の吸収促進効果が大きくなり、ガス吸収速度は急増する。その結果、シャーウッド数はレイノルズ数Reの約1.0乗に比例して増加し、その傾きは理論モデルの0.7より大きい。上下の管と管の隙間を2mmに小さくすると、滴落下は生じず、その隙間ではシート状の液膜流れとなる。その結果、Reが30以下では表面波が生じず、ガス吸収速度は著しく低い。しかし、Reが30以上になると、液膜流れの不安定による表面波が生じ、ガス吸収速度はかなり大きくなる。しかし、滴落下によるガス吸収促進に比較すれば小さい値にとどまる。これは、滴落下により生じる表面波の振幅が、不安定により生じる波よりかなり大きいことによるものと考えられる(以上の結果については、投稿準備中)。 以上と平行し、液膜流れの表面波によるガス吸収促進についての基礎的研究も行った(Park and Nosoko, AIChE.J., in print参照)。
|