水平管群吸収器は、各種の化学反応プロセスや熱・物質移動プロセスで広く利用されている。本研究では、水平管群を濡らして流下する液膜に生成する表面波の運動とそれによるガス吸収促進機構の解明を目的として、実験と理論解析を行った。理論モデルでは、流下液膜は滑らかな表面を有し、管軸方向に均一であり、かつ各管上で濃度境界層が管頂部から管底まで液膜表面に沿って発達すると仮定した。本年度は、管径と上下の管間隔を変えて実験を行った。 管間隔が毛管定数以下では、上下の管の間がシート状流れとなり、全ての段において管軸方向にほぼ均一な流れとなるが、発生する表面波は比較的弱い。シート部での混合は小さく、表面波による促進は低いため、ガス吸収は理論値と同レベルか理論値より低い。一方、管間隔が毛管定数以上では、上下の管の間で滴下流れとなり、この滴下が管上の液膜に強い表面波を生じるが、液膜は管軸方向には片寄った流れとなる。流量が低い範囲では、片寄った流れの影響が強く、ガス吸収は理論値よりも低いが、流量増加とともに、滴下流れと強い表面波の効果により、ガス吸収は理論値より大きくなる。 一般に、管径が小さいほど個々の管上の液膜中の濃度境界層の発達距離が短くなるため、ガス吸収は大きくなる。管間隔が小さくシート状流れとなる場合は、小管径の管群ではレイリー不安定により表面波が促進され、ガス吸収も促進される。一方、管間隔が大きい滴下流れの場合小管径の管群では、液膜の流れめ片寄りが大きく、ガス吸収は小さい。 これらの結果は近く、Nosoko et al.Int.J.Heat Mass Transfer 45(2002)2729の続報として英語論文にまとめ投稿準備中である。比較のために平行して、鉛直管群吸収器の基礎研究を行い、その結果も論文にまとめた。
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