研究概要 |
本年度は前年度の実験を継続し,試料凍結の際の温度制御性を改善するため冷却実験装置に改良を加えた.そして,細胞(面積)密度と冷却速度をパラメータとして単層培養細胞と懸濁細胞を凍結・解凍し生存率を詳細に調べ,位相差光学顕微鏡観察により未凍結状態の細胞の様子を明らかにした. ヒト皮膚繊維芽細胞を実験試料とし,細胞面積密度約10^4〜10^6cells/cm^2でφ35mm培養皿上で単層培養したものと細胞密度10^5〜10^7cells/cm^3で縣濁し2mlの凍結容器に入れたものを凍結装置に固定し実験を行った.凍結保護物質には,10%ジメチルスルホキシドを用いた.冷却源として液体窒素を用い,単層培養細胞と懸濁細胞で別の装置を用いてヒーターに加える電圧をプログラム調節計(Yokogawa UP750)で制御することにより,培養皿に入れた試料を冷却速度0.3〜約30℃/minで約10〜-180℃以下まで冷却した.その後解凍し,懸濁状態とした細胞(単層培養細胞は酵素により縣濁化)でトリパンブルー色素排除試験法により生存率を測定した. その結果,単層培養において細胞面積密度が高くなると生存率が低くなり,しかも,最適冷却速度が低冷却速度側にシフトした.そして,高面積密度の単層培養細胞では,細胞同士の接触が観察された.しかし,縣濁細胞においては細胞密度増加に伴う顕著な生存率低下はみられなかった.また,顕微鏡により観察された形態は,単層培養細胞では紡錘状であったが縣濁細胞では球に近い形であり,単層培養細胞と比べて縣濁細胞の方がはるかに小さいことが確認された.このことから,それらの生存率低下要因として細胞同士の接触が関与し,縣濁細胞においては球形で小さいため同じ細胞密度でも接触しにくいことから生存率の低下がみられなかったと考えられた.
|