研究課題
本研究は、地球環境にやさしいセミドライ(MQL、最小油剤量)切削および完全ドライ(油剤なし)切削の可能性を熱工学的に探ることを目的とする。特に、完全ドライ法に先立ち実用化が期待されているセミドライ(MQL)法に注目して、冷却の観点よりその実用化を熱工学的に検討する。このセミドライ法とは、常温空気に油剤液滴を添加したミスト噴流下で切削加工を行う方法である。この方法は、数十〜百cc/hの植物性油剤の助けを借りるものの、完全ドライ法で必要な極低温空気噴流による顕熱冷却をミスト液滴の潜熱冷却に置き換えることが可能であり、空気量の大幅な減少が期待でき、エネルギー消費をも考慮に入れた環境負荷の低減化が期待できる。本研究では、微細ミスト噴霧流において、空気流速、液滴添加量、液滴径および液滴速度が及ぼす冷却能力(熱伝達率)への影響を実験的に検討するとともに、その冷却機構を明らかにし、前出のパラメータの最適条件を見つける。特に、加熱面上での液体挙動がその冷却能力と密接な関連を有するため、液滴および液膜の挙動を詳細に検討した。昨年度および一昨年度は、常温空気噴流に微小水滴を添加する水ミスト冷却実験を行い、水ミストによる冷却特性のデータを蓄積するとともに、液浸法により液滴直径を、レーザードップラー流速計により液滴速度を計測し、冷却機構および冷却限界を検討し、冷却能力の実験相関式を得た。本年度は、実際の応用時(加工時)の冷却効果を確認するため、液体として実際に切削油剤として使用されている市販の植物性切削油剤を用いてオイルミスト冷却の実験を行い、その冷却特性を検討した。その結果、油の低い表面張力に起因し液膜冷却がその支配機構であることを確認し、液体の顕熱輸送に基づく冷却限界を示した。併せて、次元解析により、ミスト冷却伝熱に及ぼす液の粘性および表面張力の影響を検討し、熱伝達の無次元相関式を提案した。
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Proceedings of IMECE 2004, 2004 ASME International Mechanical Engineering Congress and RD&D Expo CD-ROM Vol.1
ページ: IMECE2004-61840