研究概要 |
マランゴニ対流とは,気体と液体の界面において,温度勾配や濃度勾配に起因する表面張力の不均一から流れが誘起される現象をいう.マランゴニ洗浄・乾燥とはこの現象を,固体一気体一液体の三相界面に発生する液体メニスカス部に応用したもので,低沸点有機媒体ガスが超純水に吸着・吸収・溶解して水の表面張力が変化し,そのためにメニスカス部にマランゴニ流動が発生し,これに接する固体面上の薄液膜を下方に排除して洗浄・乾燥させる技術である.この技術は半導体ウェハの製造工程における洗浄・乾燥工程に応用されているが,その洗浄・乾燥の効率を向上させるのに必要な基礎的な物理現象に基づく研究は少ない.そこで本年度は,液相温度・チャンバー内の雰囲気圧力,低沸点有機媒体ガスの濃度・三相界面の相対的な移動速度およびシリコンウェハの表面性状が半導体ウェハの乾燥度にどのように影響するかを調べた.その結果,雰囲気圧力を変化させた場合,低沸点有機媒体ガスを付与しない場合の乾燥度はどれも同じで一定であった.しかし低沸点有機媒体ガスを付加すると,乾燥度は雰囲気圧力を小さくするほど向上した.これは圧力を降下させることにより,液体メニスカスの蒸発が進み物質移動が促進されるためである.また,低沸点有機媒体ガスの濃度を0%から60%まで変化させた結果,30%の時に最も乾燥度が大きくなった.表面の濡れ特性を変えた鏡面試料について,乾燥度は接触角の大きい試料つまり濡れ特性の低いものほど低下した.また接触角が65度の試料について,鏡面性のものと非鏡面性のものを比べると乾燥度は非鏡面のものが高い結果となった.これは非鏡面性によるキャビティにより,薄膜と固相の接触面積が減少したためである.
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