本年度は、昨年度の結果を踏まえた実験を行った。即ち、我々がこれまでダイナミック型氷蓄熱の蓄熱材として水-シリコン油混合液を撹拌・冷却して氷スラリーを生成する過程で発生する静電気により帯電する油に着目した。この帯電した油を容器壁面に引き寄せることができれば壁面氷結の防止につながる可能性がある。そこで、予備実験として水-シリコン油混合液の攪拌時の帯電特性を調べ、含水率40〜60%で帯電量が最大となることが分かった。次に、撹拌により発生させた静電気により帯電させた混合液滴を印加されている電極間中で落下させ、その挙動を観察した。容器、攪拌翼、電極はステンレス製である。電極板は長さ500mmで電極板間の距離は17.65mmである。実験は、含水率を変えて行った。最後に、電場の中の容器内で撹拌されている含水率50%の水-シリコン油混合液の挙動を下部から観察した。容器は内径80mm、高さ100mmで、側面はステンレス製で接地、底部はアクリル製で非接地である。定電圧発生装置で容器に200V印加して電場を発生させた。ここで、水と油にコントラストをつけるために油を赤く染めた。液滴の観察実験から、撹拌による静電気によって油を帯電させることで、始めて油が電極板と引き合うことが分かり、油は含油率70〜100%の間で油の帯電により左の電極側に変位することが分かった。また、混合液の観察実験から、電場をかける前は、混合液は赤く均一に混ざり合っている。一方、電場をかけた場合は、容器壁面では油の濃度が著しく増加し、含油率70%程度となり、容器中央付近は含油率が減少していることが分かった。以上から、水-油混合液に静電気が発生している場合、印加による電場の効果により油を容器壁面近傍に引き寄せることが可能であり、さらに電圧を変えることで、壁面での含油率を制御でき、壁面氷結の防止につながることを明らかにした。
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