従来の発電・配送電システムは大規模な発電所から、変電所を介してエンドユーザに電力を供給する集中型である。近年の規制緩和により発電が自由化されるようになると、配送電システムは複雑化し、最近発生したニューヨークの大停電事故で明らかになったように、その原因追求にかなりの時間を要し、コンピュータを基礎とした情報化社会が一瞬のうちに機能しなくなるという危険性が増加している。そこで分散化電源が注目されるようになった。分散化電源として種々のシステムが考えられているが、マイクロガスタービンを原動機とした発電システムは、既存の技術の改良により実現することが可能であり、最も信頼性の高いシステムを構築することができる。水素燃料は燃焼によって二酸化炭素を排出しない利点があり、地球温暖化を防止する次世代の燃料として注目されている。そこで、本研究では水素燃料を用いたマイクロガスタービン用燃焼器の開発を目的とした。水素-空気の予混合火炎は燃焼速度が速く、逆火の危険性があるため、燃焼方式としては拡散燃焼を利用する。本研究者は衝突噴流を用いることで、強い乱れを発生し、燃料と空気の混合を促進することにより、燃料と空気を分離して供給しても、予混合的な燃焼が可能であることを示した。本研究では衝突噴流の原理を利用することにより、旋回を用いずに広い範囲のターンダウン比で安定に作動するマイクロガスタービン用高負荷燃焼器を開発した。この燃焼器では高温にさらされる部分をセラミックス化することにより熱損失を低減し、また、試作した燃焼器を自動車用ターボチャージャーに適用することにより、マイクロガスタービンを駆動することに成功した。さらに排気ガス分析の結果、水素燃料の場合唯一の有害排気ガス成分であるNO_xも極めて少ないことが分かった。
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