本研究は研究代表者が従来より提唱しているフランジ付き点火プラグの点火特性改善効果を、基礎実験ならびに実機を用いて実証しようとしたものであり、平成14年度から15年度の2年間で以下の成果が得られた。 1.基礎実験として実施した、実機の燃焼室流動場を模擬できる定容燃焼容器の実験においては、当初期待した、主流および乱れ強さの抑制効果は確認できなかったが、火花放電時に発生する衝撃波をフランジで反射させ、火花間隙部で衝突させることによって得られる熱回収効果は確認できた。強い主流の存在する場では、火炎核からフランジへの熱損失が強くなり、熱エネルギー回収効果とのバランスが問題となる場合があることも示唆された。また現在、フランジの反射面形状は平面となっているが、適切な曲面を検討することの必要性も示唆された。 2.実機テストでは基礎実験の成果を基に、一般のガソリン機関と比較して点火条件が厳しいとされる天然ガスエンジンを用いた。市販の点火プラグを加工し、4気筒すべてにフランジ付きプラグを装着して希薄領域拡大効果と点火エネルギー低減効果を調べた。希薄領域拡大効果に関しては、通常プラグを採用した場合と比較して、当量比で0.1程度希薄限界が拡大した。具体的には、通常プラグでの希薄限界当量比は0.65程度であったが、フランジ付きプラグでは、0.55程度まで拡大された。火花エネルギー低減効果に関しては、実機に装着されている標準の点火装置における一次電流を変化させる方法を採用した。同一当量比で運転した実験結果では、通常プラグと比較してフランジ付きプラグの場合は、一次電流を半減させても同等の点火確率を得ることが確認された。中心電極側反射面が複雑な形状を呈している関係で、最適なフランジ間隔には一様な傾向が明確ではないが、おおむね4mm程度で最良の点火確率が得られ、また、フランジ直径は点火特性に大きな影響を及ぼさないことが確認された。実用化にあたっては、フランジ直径7〜9mm、間隔4mmが有効な設計範囲であることがわかった。
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