水蒸気爆発は高温溶融体が水に接触して起こる爆発的な現象である。水の急激な相変化は高温溶融体と水との直接接触熱伝達によってもたらされるが、通常大気に開放した雰囲気で高温溶融体が水中に落下する際には空気をまきこみ、直接接触熱伝達を阻害する可能性がある。空気を排除して水温の飽和圧力状態になると現象はどう変わるか、水は容器内圧力に対して飽和温度よりも低いサブクール状態でなければ本現象は発生しないかを見極めることを目的とした。 水蒸気爆発であるか否かの判断、水中の水面近く、底、両者の中間、いずれで爆発が起こるかの観測が必要なため、水の容器は可視化し、かつ20Torr程度の真空状態を保持し、高温用融体の落下を容易に制御できねばならなかった。失敗を重ね、時間はかかったが、目標に達した。 圧力変化はピエゾ型センサーで検出し、高速度ビデオの画像と同期して記録できた。圧力パルスの発生により水蒸気爆発の発生を判断できた。比較的低温で溶融するスズおよびハンダ(スズ・鉛合金)を取り上げ、従来の研究と比較した。亜鉛が爆発しにくい点は未だに分かっていない。30℃前後の水に、圧力が飽和圧に近い空間を介して380℃程度の高温融体が落下しても水蒸気爆発は発生しなかったが、落下空間の圧力が200Torrになると発生する。高温溶融体には過熱度、水にはサブクールが必要であることなどを確認した。純金属と合金で現象の性質に違いがあるのかは今後の課題である。熱力学的なデータが乏しいが、合金について考察を続ける。水蒸気爆発の新しいモデル化を試みる。
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