研究概要 |
単結晶引上げ法の中で一般に広く用いられている,チョクラルスキー法を想定したアスペクト比(融液径/融液深さ)2,直径比(冷却棒径/融液径)0.3および0.5の円筒容器内液体金属(プラントル数0.025)熱対流について,(1)冷却棒回転なし,液面(自由表面)断熱,(2)冷却棒回転あり,液面断熱,(3)冷却棒回転あり,液面熱損失考慮という3種類の液面境界条件に対して3次元数値シミュレーションを実行した結果,1.自然対流と回転による強制対流の二つの振動不安定効果が存在し,容器内流れは複雑な不安定特性を示す。2.回転による強制対流効果が小さく自然対流が主要なとき,容器中心部で下降し壁面近傍で上昇する単一のドーナツ状ロールが形成される。3.この流れのロール構造には直径比等のパラメータに依存して,超臨界域では軸対称か非軸対称の振動が生じる。4.回転による強制対流効果が無視できなくなると,冷却棒端下部に回転軸を持つ新たなドーナツ状ロールが形成され,2重のロール構造となる。 また,円筒容器内溶融ガリウムの熱対流実験のための装置を作成した。カーボン製円筒容器を恒温バス内に浸して容器を加熱する方式とし,ガリウムの酸化皮膜生成抑制のために,装置全体を窒素雰囲気のデシケータ内に設置した。アスペクト比2,直径比0.286および0.5の場合について,予備実験を行った結果,1.融液振動の大きさは高さ方向に依存し,容器底面に向かうにつれて小さくなる。2.本年度の実験でのグラスホフ数程度の超臨界状態では,冷却棒を回転することの振動抑制効果は顕著ではなかった。今後,より高いグラスホフ数での実験を行う必要がある。
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