研究概要 |
本研究では,スチールはりに常温硬化複合材料を添付した構造を製作し,温度変化と振動特性の関係を解析と実験によって調べた.また,固有振動数や減衰特性の最適設計を研究し,有効な評価関数を提案した.最適設計時の多くの繰り返し計算を想定し,また種々の境界条件にも容易に対応可能なリッツ法を適用して解析を実施した.FRPシートを部分的に添付した場合,はり全体に同一の試験関数を用いたリッツ法による振動解析結果と実験値には,幾つかの振動モードで大きく固有振動数が異なる場合があることが分かった.これは,FRPシートによる段付き構造が,正確にモデル化できていないためであり,関数を分割し,幾何学的境界条件の連続性を考慮することによって解決できることがわかった.温度変化が振動特性に及ぼす影響を明らかにするため,両端固定はりに対して温度変化によって発生する軸力を考慮した解析を実施し,固有振動数と減衰比を求めた.実験による検証も行い,温度変化に伴う固有振動数と減衰比の変化を確認した.振動特性の最適設計においては,目的に応じた評価関数を設定し,遺伝的アルゴリズムを適用して最適設計を実施し,固有振動数と減衰比をバランスよく最大化できる繊維配向角を調べた.解析に基づきFRPシートを積層し,常温硬化樹脂を用いて部分的に補強したスチール製平板を製作した.これを片持ち支持して振動実験を実施し,固有振動数と減衰比を測定した.実験においては,製作された複合材料構造の剛性と減衰特性を高い精度で計測する必要がある.しかし,複合材料は多くの設計パラメータを有するために,部分的試料を用いた強度試験では計測データにばらつきが生じる.本研究では,製作された複合材料構造の振動応答データをもとに,遺伝的アルゴリズムを用いた高速かつ高精度な同定手法を採用した.
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