ベルト挟持(きょうじ)搬送機構は、郵便自動仕分け機、自動改札機、ATMなどで広く用いられ、2本の平ベルト間に媒体(郵便物、切符、紙幣など)を挟んで搬送する。機構設計上、駆動ローラ周速に対して2本のベルトおよび媒体がどのような速度で運動するかを知ることが重要である。2年間のシミュレーションおよび実験で得られた研究成果を以下に要約する。 ベルト・ローラ基本系(1本のベルトと2個のローラから成る系)の負荷運転時の特性 (1)ベルト張り側/緩み側の張力の和および差は、それぞれ初期張力の2倍および負荷荷重に等しい。 (2)負荷荷重の増加とともにローラとベルト間のすべりが増加し、駆動側のそれは従動側のそれより大きい。 ベルト挟持搬送系(2組のベルト・ローラ基本形をベルト直線部で接触させた系)の特性 (3)媒体搬送しない場合、2本のベルト間のすべりは、ベルト押付け量、ベルト間摩擦係数、ベルト伸張率が大きいほど増加する。 (4)搬送媒体の駆動ベルトに対するすべりは、ベルト押付け量、ベルト伸張率が大きいほど増加し、媒体の厚さや媒体とベルト間の摩擦係数にはあまり影響を受けない。 以上、FEM汎用解析ソフトを用いてベルト挟持搬送系の運動シミュレーション法を確立し、その基本特性のいくつかを明らかにした。しかしながら、与えられた条件下でベルトや媒体の速度を予測できるまでには至っていない。今後の課題として、ベルトの張り側・緩み側張力、摩擦力、ベルト・ローラ間のすべりの関係式を導き、ベルト速度の予測法(簡易計算モデル)を確立すること、このモデルをベルト挟持搬送系に拡張することなどが挙げられる。
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