研究概要 |
現在,特性行列同定法の研究はいろいろなところで行われているが,取り分け,我が国の先駆者である東京工業大学の大熊教授がリードし,多くの研究成果をあげてきた.その多くは主に同定手法に関するものである.しかし,実用化を考慮すると,理論的な導出方法のみならず,誤差論が欠かせない研究であるが,この分野では殆ど行われていない.そこで,特性行列同定法を使用して剛体特性を求めるための実用を目指した検討を行った. 筆者は,これまで加振実験データに特性行列同定法を適用することで,設計上,重要な剛体特性が得られる方法について研究してきた.ここではモード特性を求める際,モード特性が満たすべき条件から,ある一定の制約条件を付加して誤差を最小にするように最適化手法を用いて同定している.しかし,この手続きはある程度の数値計算について理解がないと困難が伴うため,広く利用されるのには難しい状況にあった.そのため,今回は加振実験データを精度良く求めることで,通常の偏分反復法で求めたモード特性でも十分精度が得られることを確認した.現在広く使用されている偏分反復法によるモード特性を用いることで,簡便的同定が行え,広く利用されることが期待される. さらにその実用的適用を鑑みて,加振実験による計測誤差の同定精度におよぼす影響を明らかにした.特性行列同定法では自己応答伝達関数を必ず必要とするが,実際の計測ではセンサーの物理的大きさなどの理由から,厳密な意味の自己応答伝達関数は計測できない.そのため,加振点近傍の応答を用いて近似的に自己応答としているのが一般的である.しかし,このことは同定される剛体特性の精度に影響を及ぼす.そこで,これを調べるために,厳密解が容易に得られる平板で,実験と計算の両面から検証を行った.その結果,振動モードの節からできるだけ遠ざけて伝達関数を測定することで,精度の向上が得られることを示した.
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