オーバーハング回転体は回転角速度と回転体の傾き角速度に依存する強いジャイロ効果を有するために、制振力を計算するための制御ゲインはこれら2種類の角速度の関数になるので、固定ロバスト補償器を用いた制御では高い制振性を得ることはできない。実際のオーバーハング回転機械では制振したいオーバーハング部を直接制御することができないために、軸受部に制御用のセンサとアクチュエータを取り付けて間接的にオーバーハング回転体を制振することになる。このようなオーバーハング回転軸系の動特性の理論解析と制御系の設計を行うために、制御装置を含めたオーバーハング回転軸系の解析モデルを求め、運動方程式及び状態方程式を導いた。 この解析モデルの妥当性は、従来からの研究により回転軸系の振動制御についての適応範囲と特性が詳細に分かっている最適レギュレータ理論を用いた予備的な解析により確認できた。研究の手始めとして、ジャィロ効果を含んだオーバーハング回転体の状態量を非定常カルマンフィルタによって推定し、ジャイロ項を無視したオーバーハング軸系のモデルにH★制御則を適用した制御系に組み入れることにより、ジャイロ効果の影響をロバスト制御則の制御ゲインの導出に反映することを考えた。この手法を解析モデルに適用してシミュレーションを試みたところ、カルマンフィルタのゲインが発散してしまったので、次年度はその原因解明から始める。 解析モデルに対応する実験装置を作成し、予備実験として最適レギュレータ理論を用いたオーバーハング回転軸系の制振特性を実験的に調べた。これらの実験により回転軸系の一次危険速度付近においても制振効果が得られることが確かめられたが、センサ信号に不規則な電気ノイズが乗っていることがわかった。さらに制振性能を上げるためにノイズを減らす必要があり、現在ノイズの低減対策について検討している。
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