研究概要 |
細胞のマイクロ粘弾性解析手法として,探針をコンタクトモードで走査しながら試料に周期的な応力を加え、たわみ信号に現れる周期的な応答から試料の粘弾性を評価フォースモジュレーション法について,試料の粘弾性と溶液の粘性の両方を考慮に入れたカンチレバーにおける1次元の振動方程式を導入し,この方程式に基づいた数値計算により、カンチレバー振動の振幅・位相から、Sneddonモデルを複素弾性率に拡張し、1次元の弾性[N/m]と粘性[Ns/m]から弾性率と粘性係数を計算した。このとき、カンチレバーを試料にあらかじめ押し込んでいる量は一定であると仮定し測定した.その結果,細胞運動とかたさの変化について,1)細胞が停止状態にあるときかたさの分布はほとんど変化しない.2)ひとたび運動を開始すると細胞体部分のかたさが劇的に減少することがわかった. これらの結果を考察し、今までアクチンフィラメントの分布だけで議論されてきた細胞のかたさに対し、そこに働く張力も非常に重要であるというモデルを提案した.運動とかたさの関係を明らかにすることは、フォースモジュレーション法の高い時空間分解能により初めて可能になった. 次に,走査型プローブ顕微鏡(SPM)のカンチレバー探針を,試料に周期的に押込むときに,特に,探針が試料と接触・乖離を操返す場合につき、カンチレバー運動に対する流体の抗力を考慮した高次の振動モードを含むカンチレバー運動方程式を解析的に解き,カンチレバー根元の押込み方向励振振動に対するSPMカンチレバー先端の振動振幅比,位相遅れと,試料の表面剛性,表面粘性との関係を導出し,粘弾性分布を定量的に評価する方法を構築した.これより,カンチレバーの位相差,振幅比と,試料の表面粘性,表面剛性の関係を示す粘弾性分布図を求めた.これにもとづき,励振振動数などの依存性についての理論的検討を行い,接触と乖離を繰り返す場合の測定での考慮すべき点を明らかにした.
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