最も基本的な積分サーボ系を取り上げ、慣例であった一定のアンチ・ワインドアップゲインを伝達関数へ拡張し、座標変換により制御入力の飽和を考慮したレギュレータ問題に帰着させた。このレギュレータの大域的漸近安定性を保証する条件を明らかにし、σ安定フィードバック則として改めて定義した。制御入力が飽和してもしなくても、システムの大域的漸近安定性を保証する設計手法を明らかにし、数値シミュレーションにより、その妥当性、有効性を検証した。この結果は2002年7月にスペインのバルセロナで開催された15th IFAC World Congressで発表した。 次に、DCモータ、ハーモニックドライブ減速装置、弾性アームから成る弾性アームロボットシステムを構築し、本研究で提案する動的アンチ・ワインドアップ制御理論を応用し、その有効性を実験的に調べた。コンピュータにはディジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)を用い、制御則のプログラムはパーソナルコンピュータで記述したC言語のプログラムをDSPにダウンロードして実験を行った。その結果、弾性アームロボットのような振動的なシステムでは、制御入力が飽和すると制御性能が著しく劣化することが実験的に確かめられた。さらに、本研究で提案する動的アンチ・ワインドアップ制御器を適用して実験した結果、これらの制御性能の劣化が抑制され、良好な制御性能が得られることが確かめられた。この結果は2002年12月にアメリカ、カリフォルニア州、バークレーで開催されたIFAC Conferenceで発表した。 さらに、制御入力の飽和量を十分小さく抑制する設計理論を研究中である。これまでの考え方は、飽和することは避けられないとして、その悪影響を抑制するというものであった。これに対して、飽和自体を抑制する補償器を設計し、数値シミュレーションによりその妥当性を検証した。今後は実験的検証を行う予定である。
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