研究概要 |
本年度の研究計画は,年度当初に国内外のナノセンサ研究に関する調査とセンサー較正用流路の設計試作と性能試験およびナノ流動センサの予備的な試作であった. この計画に基づいて,始めにナノ流動センサに対する国内外の研究動向を調査した.その結果,ナノスケールの流動センサとしてカーボンナノチューブや親疎水基をもつ有機高分子の可能性を論じたものがほとんどで,使用可能なデバイスになっていない現状である.また,特に流速や流量に対する応答があったという報告に留まっており,較正も含めた実際の流速計測を行っているものは調べた範囲では見あたらなかった.以上の調査から本研究の有用性が明らかになった. 実際の研究としては,深さ80μm,幅100μmの微小流路内にマイクロベンチュリ構造を設定し,圧力差を計測した,また,流体を局所的に加熱した熱マーカ速度を計測した.その結果,気泡を利用する圧力計やポンプでは気体の液相への溶解が無視できないこと,引き出し流路の幅が本流路に較べてあまり小さくできないのでそちらへの流れの分岐が生ずることなどが明らかにされ,来年度以降の制御システムに対する有用な知見が蓄積された.本知見の一部は日本機械学会熱工学講演会(沖縄2002年)において研究代表者が公表した.また,今回使用したPDMSに関する材料特性について共同研究者(星野,下山)が発表した. 以上のように,「マイクロ流体システムを構成する前段階として,基本設計も含めて校正用流路をある程度試行錯誤的に試作し,この年度内に流路特性に関する十分な知見を得る」という当初の計画に対して十分な成果が得られた.
|