研究概要 |
本研究では人間-環境-人工物のインタラクション解析に基づくユーザビリティ設計の確立をめざし,人間の作業行動場を,人間・作業環境・人工物の三者が織りなす相互作用系,技術と人間と実践で形作られる生態系(エコロジカル・システム)として捉え,インタラクションを通して生成されたり消滅したりする関係生成のダイナミクスを十分に考慮した組織的視点に立つ設計論を確立した.そこでは人間ユーザの位置づけとして,従来のようにシステムの挙動を監視するだけといった受動的・固定的な役割の割当ではなく,人間が本来有する能動的な主体性や系への参画意識を誘発し,人間の行動多様性を抑制するのではなく許容していくなかで学習・習熟を可能にし,作業環境や他者との関係生成をより活発なものにしていくための共適応機能を有する人工物のデザイン原理についての究明を行った. ここでの研究目的は,従来のような機械化・自動化による代行ではなく,あくまでユーザを系に組み込んだままでの支援の在り方に固執するもので,とりわけ人間の系への介在意識,すなわち自らが実行することの責任感や達成感をいかに維持するかを念頭に置いた設計によってユーザ能力の向上を支援するためのユーザビリティ設計について取り組んだ点が新規性の高い部分である. とくにこのような継続的で透明性の高いインタラクションを設計していくには,本来人間同士の間の関係に固有に見られる「社会性」の特質を工学的な設計物に埋め込んでいかねばならない.社会性とは,いずれか一方が他方に対して固定的な役割を演ずるものではなく,あくまで両者が対等な立場から相互作用を介して相手に適合する.努力を続け,相互を「作り合う」関係にあるべきものである.この点に着目し,本研究では社会性を確立するための「共適応」原理について究明を行い,これを機械人工物の設計論に展開して,数々のシステム実装を行った. 具体的には以下の諸テーマについて研究を遂行した. (理論)共適応のための見習い学習手法の確立とエージェントの社会的推論の定式化 (応用事例1)技能伝承支援のためのインタラクティブ・エージェントの設計 (応用事例2)ロボット遠隔操作システムのための生態学的インタフェース設計 (応用事例3)ソーシャルロボットの開発
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