研究概要 |
1.脳機能を画像化する方法fMRI(functional MRI)は,脳活動の空間分解能が優れていることから,視聴覚や高次の脳機能研究によく用いられている.しかし,この装置は高い磁場を必要とすることから,装置近辺に磁性体を含む機器を持ち込むことは,危険であると同時に出力画像に影響を与えるという問題がある.この問題を解決するため,高磁場環境下における応答装置を開発した.さらに、高磁場による誘導起電力が生じないこと,MRI撮像画像への影響はほとんどないこと,操作時の脳活動部位は指だけであることは確認された. 2.人間の顔などのパターン認識において,主観輪郭線などの錯視特性は深く関係していると言われている.本研究では,非対称な図形の主観輪郭知覚特性を定量的に研究し,数理モデルを提案した. 3.聴覚情報(声)による人物同定に関する神経システムを研究するために,機能的MRIを用いて脳の賦活領域を調べた.実験結果から,知らないヒトの声に対し,親しいヒトの声に対する反応は側頭極(BA38),上側頭回(BA22/39),帯状回GC後部(BA23/29),及び前頭葉内側面(BA10)では強い反応が見られる.これらの結果は過去の視覚情報(顔)による人物同定の砥究結果と一致している.さらに,中前頭回(BA6),及び楔前部(BA7)において活動の上昇が認められるため,聴覚情報から視覚情報を生み出すことを推論できる.それに基づいて視聴覚による人物同定モデルを提案する.また,実験1(話者:日本人,被験者:日本人,言語:日本語)及び実験2(話者:日本人・中国人,被験者:中国人,言語:日本語)では,母語の異なる被験者を採用したが,ほぼ一致する結果が得られた.従って,被験者の母語(日本語及び中国語)に関わらず,人物同定を処理する神経システムは一致していると推定する.
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