研究概要 |
1.脳機能を画像化する方法fMRI(functional Magnetic Resonance Imaging)は,脳活動の空間分解能が優れていることから,視聴覚や高次の脳機能研究によく用いられている.視覚,聴覚および触覚の脳高次機能のfMRI実験を実施するため,前年度に開発された高磁場環境下における実験装置を用いて,触覚長さ知覚の認知とfMRI実験を実施した.人物同定メカニズムの解明に基礎研究機器を提供している. 2.視触覚の長さ知覚実験結果より,物体長さ認識の正確さが視触覚>視覚>触覚の順になることは分かった.すなわち,長さ知覚においては視覚優位であり,この結果は,視覚情報を併用すれば,触覚形状を連続に呈示しなくてもよいことは分かった.さらに,以上の実験結果を定量的に解析し,視覚情報を併用した触覚形状ディスプレイの簡略化方法を提案した. 3.fMRI実験を用いて下記の仮説を検討するために,高磁場環境で用いることができる長さ刺激呈示装置を製作し,機能的な核磁気共鳴画像法(fMRI:functional)を用いて,手指触覚による長さ認知実験を実施した.実験結果から,触覚長さ認知は,高次視覚情報処理領域と言語情報処理領域に深く関係していることが判明した.これらの結果は,人間の触覚情報処理と人物同定メカニズムの解明に有効な基礎データを提供する. 1)人間は触覚による長さ認知の際に,触覚心内表象(Tactile mental image)を用いて対象物体を視覚的に捉えている,2)触覚による長さ認知には言語的判断が伴う(言語情報処理領域と関係する),3)触覚のみによる長さ認知であるため,手指に注意を集中し,繰り返し判断が行われる.
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