研究概要 |
遠隔地に居る複数の設計者が一つの仮想空間を共有し,円滑にコミュニケーションをしながら製品形状の評価・決定ができるシステムの開発が切望されている.そこで本研究では,我々がこれまでに行ってきた仮想空間における3次元形状評価の合成的解析や仮想空間を用いた遠隔コミュニケーションシステムの開発,および本システムを用いたバーチャルコミュニケーションの解析・評価の研究成果を基にして,空間的に離れた複数の設計者が製品の形状評価を協調的に行うための支援システムを開発することを目的とする.これまでに本研究では、ユーザの身体動作をそのまま仮想空間上のアバタに反映させる3次元形状評価のための協調作業支援システムを開発し、高い評価を得ている。しかし、本システムではヘッドマウンティッドディスプレイ(HMD)やヘッドセット、磁気センサを使用するため、ユーザのコミュニケーション動作を拘束している可能性が高い。そこで本年度は、3次元形状評価のための協調作業支援システムにおいて、ユーザの身体動作をアバタにそのまま反映すると同時に、話しかけによって仮想空間上の相手アバタをうなずかせることにより、システムを使用する際に損なわれてしまうノンバーバル情報を補うことで、より円滑に協調作業を支援するシステムを開発した。また、官能評価とアンケートによる統計的解析により仮想空間3次元評価のための協調作業支援システムにおけるうなずき反応の影響について検討した。その結果、提案するシステムを用いた仮想空間で、話しかけに対するうなずき反応が形状の協調的形状評価に悪影響を及ばさないことが示された。また、本システムおよび協調作業等に関するアンケートを行った結果、検定による有意な差は見られなかったが、全ての項目において概ね良好な回答が得られ、システムの有効性が確認された。
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