研究概要 |
高齢社会の到来により,日常生活で介護を必要とする高齢者及び加齢による障害者の増加は不可避である。代表者のグループでは,狭い屋内環境での移動,ベッドへの幅寄せ,軽作業中の移動等に有効な全方向移動車椅子の開発を行っている。今年度は,搭乗者に不快感を与えない快適走行制御,及び介護者にとって小さな力で違和感のない操作を可能にする全方向パワーアシストに関する研究を行った。 快適走行制御に関しては,乗り心地,快適性に悪影響を与える周波数帯域(車椅子の固有振動数及び人の内臓の固有振動数)の振動を抑制することにより,定速走行時のみではなく,身体の弱った搭乗者にとって危険な加減速時においても極力負担にならない走行制御法を検討した。その定式化には研究分担者らによって開発されたハイブリッド整形法を用いている。SD法,加速度センサによる揺れの測定において,提案方式の有効性が確認された。 さらに,全方向パワーアシストに関しては,介護者の入力を力覚センサで計測できるよう,車椅子のハンドグリップを改造し,実際に車椅子をあらゆる方向に押す実験を行い,加えられた力及びモーメントを求めた。この際,介護者による力の個人差が予想されるので,十人程度のデータを採取した。その後,計測したハンドグリップ入力に応じて,介護者が意図する動作を求め,その運動を実現するよう,車椅子の駆動モータの入力を生成した。その際,入力信号の変動を抑制するための一次遅れコントローラ及び移動方向を決定するためのファジィ方向推論器を設計した。比較実験により,提案方式の有効性が確認された。
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