研究概要 |
本研究では,インバータの1相が故障した場合の応急運転法として,直流平滑コンデンサを2直列構成として中性点を取り出し,故障した相を直流側中性点に接続することで,正常な2相を用いてモータを応急運転できる方式について検討を行った。平成14年度においては,基本的な駆動方式としての妥当性を検証するとともに,直流中性点電圧変動の補償法とこの補償法を適用した場合の不安定現象回避の方法,応急運転時におけるデッドタイムの影響の解析とその影響の補償法について検討を行い,実験装置により妥当性を検証した。平成15年度は,前年度における制御法の確立を受けて,提案する制御法を適用するための前提条件となる,故障素子の検出法,故障が複数の相に波及する可能性の検討を行い,以下のような成果を得た。 1.昨年度に製作した実験装置において,正常運転状態で素子の開放故障が発生した場合を模擬できるように,運転状態のインバータの特定素子のゲート信号を一時的に遮断できるように改造した。 2.前記の実験装置を用いて,種々の運転状態における故障時のインバータ電流の増加について検証実験を行った。その結果,一般的な傾向として,故障時の電流が正常時の約1.6倍程度に収まることが確認され,通常のインバータの過電流耐量を考慮すると,故障が他相へ波及しないで収まる可能性が期待できることを明らかにした。 3.故障素子の判定法として,出力の2相の電流の差分3組を演算し,これらを比較する方式を検討した。出力の3相の電流をそのまま比較する場合に比べ,故障状態の判定が確実になることを理論的に明らかにするとともに,実験装置の電流波形を用いて,実際に判定が可能であることを実証した。 以上の成果により,本研究で提案するインバータ故障時の応急運転法の基本的な有効性を確認するとともに,提案方式の適用の前提条件の妥当性についても見通しが得られた。なお,本制御方式の基本部分について,特許を出願中である。
|