本研究の目的は、酸化物超伝導テープ線材内の電流分布を定量的に評価できる測定法を開発し、種々の電磁環境下における線材内の電流分布特性を明らかにすることである。本年度は、測定法の確立のために、外部交流横磁界下での測定精度の向上や電流分布の算出方法の向上を図った。さらに本測定を酸化物超伝導テープ線材に適用し、種々の電磁環境下での電流分布特性について検討した。その結果、以下の研究成果が得られた。 1.まず実験装置においては、コイルの交流損失特性と電流分布の関連性を明らかにするために、通電電流や外部磁界の印加条件を種々に変化させられる装置を開発できた。 2.本測定で電流分布は、ピックアップコイル群による線材周辺の自己磁界分布の測定結果から間接的に求めるが、外部交流磁界下での測定で問題となる測定精度の低下に対し、キャンセルコイルを用いたキャンセル処理の手法を新たに導入した。これにより、ピックアップコイル電圧に含まれる余分な外部磁界成分を任意の磁界印加角度において精度良く除去できた。試験導体を用いた性能試験の結果、測定値と理論値との誤差は最大でも6%程度であることがわかり、本測定法が磁界中での測定においても十分な精度を有することを示すことができた。 3.電流流分布の算出精度を向上を図った結果、試験導体での実測電流との誤差を10%以内とすることができた。 4.本測定法を酸化物超伝導テープ線材に適用し、通電電流のみ、外部磁界のみ、通電電流と外部磁界を同時に印加した時の場合について、電流分布の通電電流依存性、周波数依存性、磁界振幅依存性、印加磁界角度依存性を測定した。通電電流のみ場合や任意の方向に外部磁界が印加された場合における線材内の電流分布について定性的に説明することができた。 酸化物超伝導コイルの交流損失特性と電流分布の関係を調べるために、導体やコイル形状の電流分布については次年度検討していく。
|