本研究の目的は、酸化物超伝導導体の電流一様化並びに低損失化のために、酸化物超伝導テープ線材内の電流分布を定量的に評価できる測定法を開発し、種々の電磁環境下における線材内の電流分布特性を明らかにすることである。昨年度は、短尺直線形状のテープ線材内の電流分布について、通電電流や外部磁界の印加条件を種々に変化させて測定できる装置を開発した。さらにこれを用いて、短尺直線状テープ線材における電流分布の通電電流依存性、周波数依存性、磁界振幅依存性、印加磁界角度依存性などの特性を定性的に明らかにすることができた。 本年度は、さらに、酸化物超伝導コイルの交流損失特性と電流分布の関連性を調べるために、コイル巻線形状にしたときのテープ線材内の電流分布について詳細に調べた。その結果、以下に示す研究成果が得られた。 1.コイル巻線内の電流分布を定量的に評価するために、磁界検出用のミニアチュアのピックアップコイルをディジタルノギスと連動させ高精度でコイル表面付近を移動させることで、その磁場分布を高精度で測定できるシステムを開発した。 2.絶縁銅線から成る試験コイルを用いた測定性能試験の結果、測定値と理論値との誤差は最大でも10%程度であることがわかり、本測定法が酸化物超伝導コイル巻線内の電流分布を測定するのに十分な精度を有することを示すことができた。 3.本測定法を高温超伝導コイルに適用してBi-2223単層ソレノイドコイルの電流分布を測定した。測定の結果、コイル巻線内の電流分布は一様分布でないことや、電流分布に通電電流依存性や周波数依存性があることが明らかになった。また、コイル中央付近のテープ線材幅広面に対し平行な外部磁界成分が主である場合の磁界分布のデータや、コイル端部付近の線材幅広面に対し垂直成分の影響が顕著となってくる場合のデータなど、コイル巻線内の電流分布を把握するために有用な測定結果を得ることができた。
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