1.内直径3mm程度の細管内にリング対円盤電極を取り付け、作動流体R123の流れ発生過程と分極電荷の緩和時間の相関を明らかにすることに関して 標記の課題に取り組む前に、細管内流れを比較的形成しやすいリング対角筒電極から成るEHDポンプを用いて予備実験を行い、以下の結果を得た。 (1)作動流体として絶縁性液体R123を用いる場合、印加電圧の極性を変えると流れ方向が反転したので、主体的ポンピング力は電界の2乗の空間微分で決まる電界勾配力ではない。 (2)電界勾配力の他に、高電界による液体分子の解離で発生した正負一対の電荷と非対称電界との相互作用力も発生し、この力が電界勾配力よりも優勢になる場合もある。 これらの結果に鑑み、実験の容易さからポンプのサイズを大きくし、さらに流体抵抗の低減を図って中心部に孔を開けた厚さ10mm外直径100mmの円盤電極と、太さ5mm外直径20mmのリングから成るEHDポンプを用いて実験を行い、次の結果を得た。 (3)液温20℃、電極間距離4mmに固定し、円盤電極の孔の直径を5、10、20、30mmと変えてR123の平均速度を計測した結果、予測に反して孔の直径が大きくなるほど作動流体平均速度は遅くなる傾向を示し、流れ方向に極性効果が現れた。 (4)極性効果が現れたのは、円盤の孔による電界分布の変化率の減少と円盤電極の表面処理の結果と思われ、これらの要因と電界勾配力発現の関係を検討する必要がある。 2.電極近傍の定常的速度分布を微小流体拡大観測装置によって明らかにし、印加電圧との相関を明らかにすることに関して 電極近傍のEHD流れは極めて複雑なので、作動流体に無極性液体のシリコン油を想定し、リング対円盤電極近傍の電界勾配力を数値計算で求めてベクトル表示した。これより、定常的速度分布はリング電極の円盤側近傍で印加電圧が高くなるほど速くなると推測した。
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