バルク高温超電導体は従来の永久磁石では得られない高い磁束密度が得られるため、電動機、発電機、磁気ベアリング、等々への応用が期待されているが、その実用化には実際的問題として、着磁、および消磁のための技術の確立が不可欠である。 このため、本研究の初年度である平成14年度には、高温超電導バルク体に減衰交流振動磁界を印加して消磁実験を試み、良好な消磁効果を確認している。 これに引き続き、第2年度である平成15年度は、着磁用コイル(消磁用と兼用)と直列にコンデンサを接続してLC共振回路を構成し、これに共振周波数である50Hzの交流電圧を印加して、漸増振動パルス磁界を得ることを試みた。すなわち、事前の理論解析から、LC共振回路に一定電圧の共振周波数の交流電圧が加わった場合はインピーダンスは零として振る舞うが、ステップ的な交流電圧が加わると、電流の振幅が直線的に増加するような等価可変インピーダンス素子として振る舞うことが予測されている。平成15年度は、これを実験により確認した。さらに、この漸増振動パルス磁界の振幅が所定の大きさに達した状態で、そのピークの瞬時にコイルを短絡し、指数関数的に励磁電流が減衰していくように制御を行った。その結果、以下の知見が得られた。 (1)LC共振回路にステップ的な交流電圧を印加することにより、可変電圧電源を用いずに、漸増振動パルス磁界が得られるた。これは、実用的見地から多大なメリットがある。 (2)同じ大きさの着磁磁界に対して、漸増振動パルス磁界による着磁では、直流パルス磁界による着磁に比べ、着磁磁界は約5%大きく、かつ、着磁コイルでのジュール損失は約2/3であることが確認できた。これにより、減衰・漸増交流パルス磁界を用いた着磁は、直流パルス磁界によるそれと比べて、より効率よく着磁出来ることが判明した。
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