研究概要 |
[研究目的]当該研究分野は、レーザ誘雷を視点に入れたレーザ誘導放電に関する基礎研究に該当する。研究計画は2年間を予定しており、1年目は大気環境に近づけた条件下でのCO_2レーザによって生成されたプラズマ特性を実験的に調べ、2年目に実施予定のレーザ誘導放電特性研究に必要なデータを収集することを目的としている。その場合、大気環境のうちエアロゾルを模擬するために1μm未満の微粒子が多数を占める線香煙粒子を用いる。また、大気中のレーザ光によるプラズマ生成では、エアロゾル粒子によりプラズマは粒状で断続的にレーザ光軸に存在するために、放電誘導効果においても発光と非発光プラズマ領域の両方を吟味する必要がある。そこで、本研究では2種類の集光レンズを使い分けることで、同一レーザ入射光電力でも発光と非発光プラズマが生成される方法を採用した。なお、線集光法で発生させる場合は点集光法に比べて連続的にプラズマ領域が生成され易いと考えられるため、次年度の放電誘導実験においては集光法によって異なる特性が期待される。 [実験結果と検討]大気圧空気中に出力25WのCO_2パルスレーザ光を入射して、焦点距離150mmの2種類のZnSeレンズを用いた集光法によりプラズマ生成を試みた。さらに大気環境に近づけるためにエアロゾル粒子を線香煙粒子で模擬してプラズマ生成空間に送風させながら目視で一様に分布させた。以下にそれらの条件におけるプラズマ特性について実験・検討を行った結果を示す。 (a)片凸レンズを用いた点集光法によるプラズマ特性 (1)時間積分写真から焦点付近で両端部が丸みを帯びた円筒状の発光プラズマが観測され、ICCDカメラによる時間分解写真では焦点付近から入射レーザ側に時間と共に成長する発光プラズマが観測された。(2)エアロゾル粒子条件下では、模擬粒子の密度や分布に依存してプラズマの発生場所に偏りが見られた。(3)三探針法の測定結果より、プラズマ状態は最大で80μsまで持続し、電子温度とイオン密度は各々2.5eV、2.2x10^<22>m^<-3>で最大となり、約50μsまで探針計測が可能であった。この最大値は同条件でのレーザ計測結果と良く一致しており、さらにレーザ計測の適用が困難な低エネルギー領域(<1eV,〜10^<18>m^<-3>)までも計測が可能であることが判明した。(4)模擬エアロゾル粒子条件がプラズマ計測値に与える影響については、現在検討中である。 (b)円筒レンズを用いた線集光法によるプラズマ特性 (1)時間積分写真およびICCDカメラによる時間分解写真の観測結果より、同条件での発光プラズマは発生しなかった。(2)三探針法の測定結果より、探針電流が測定できなかったためプラズマの確認はできなかった。(3)模擬エアロゾル粒子条件でも、発光観測および三探針法によるプラズマの同定はできなかった。
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