研究概要 |
ZnSeの工業化には、大型単結晶の作製方法が必要である。本実験では密封式るつぼを用い、垂直Bridgman法により、まず大型、高品質単結晶を作製した。さらに、アクセプター性ドーパントの添加による、低抵抗p型ZnSe単結晶の成長を試みた。 高品質な結晶を得るため、熱力学と結晶成長動力学の立場から成長温度、成長速度、過熱度、温度勾配、組成などの成長条件を最適化した。また、過冷却による結晶の急速凝固を防止するため、ZnSeのseedを用いた。この最適な成長条件で成長させたZnSe単結晶は透明な浅い緑で、双晶は観測されなかった。さらに、四結晶XRDの結果、半値幅として19arcsecが得られ、EPDは10^5cm^-2と、これまでの融液成長ZnSe単結晶に比較して極めて高品位の単結晶を成長することができた。 p-型低抵抗ZnSe単結晶を作製するためは、固有欠陥の制御を行わなければならない。上記の実験では密封るつぼを用いたため、組成Zn:Se=1:1を維持することができた。しかし、この条件では、V_<Se>の濃度が高いと予想され、添加したアクセプター性ドーパントと反応し、複合欠陥になり、有効なキャリアとして働かない可能性がある。このV_<Se>,濃度を低減させるため、出発原料をSe過剰した。さらに、アクセプター性ドーパントとして、Sb及びBiのドーピングを行うことによってP-ZnSe単結晶の作製が成功した。キャリア濃度を向上するため、Sb又はBiドープZnSe単結晶をアニール処理した。C-V測定によりそのキャリア濃度は55×10^<16>cm^<-3>であった。 一方、ZnSeが実用化されていない理由は、p型結晶作製の難しさだけではなく、オーミックコンタクトが得にくいこともある。本研究においてPdがp-ZnSeのオーミックコンタクトを得るための電極材料として有望であることを確認した。
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