本研究は、アンモニア(NH_3)が波長200nm以下の紫外光に対して100-1000/cm・atmという大きな吸収係数を有することに着目して、ArFエキシマレーザ(波長193nm)を用いたInNのレーザ援用NOCVD成長技術の確立を図ることを目的としている。昨年度の検討の結果、ArFエキシマレーザによるNH_3の光分解効果を用いることによって室温という低温から650℃までの広い温度範囲で均一性に優れたInN膜が形成できることを明らかにし、従来困難とされていたInNのArFエキシマレーザ援用MOCVD成長を世界で初めて実現した。 今年度は、成長膜の高品質化ならびに成長装置の実用化の観点から、以下の事項を明らかにした。 1)ArFエキシマレーザ援用サファイア基板の窒化:InNの単結晶成長のためにはサファイア基板の窒化が不可欠であるが、基板窒化時にArFエキシマレーザをNH_3ガスに照射することにより比較的低温でも窒化が効率的に行えることを見出した。 2)NH_3高分解条件下でのInNの成長挙動の解明:NH_3供給量の増大とともにInN膜質が低下するという、通常の熱分解MOCVD法の場合とは逆の傾向がみられることを見出した。その原因はNH_3の分解によって生じた水素である可能性が高いことがわかった。水素の影響はNH_3の供給方向によってかなり低減できることを明らかにした。 3)InN成長膜の高品質化:低温成長InN膜では酸素汚染による電気的・光学的特性の低下が著しいことがわかった。その改善のために、反応チャンバー内に持ち込まれる酸素、水分の除去をねらいとした反応チャンバーのベーキング効果を検討した。ベーキングによってInN膜中の残留キャリア濃度の低減、光吸収端エネルギーの低下などの改善効果が見られることを明らかにした。
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