研究概要 |
本研究は北海道で豊富に捕れるサケのうち使い道が無くほとんが廃棄されている白子に着目し、そこから抽出したDNAを用いて光学に応用できる機能性薄膜を用いた光デバイスを作製する研究である。DNA-界面活性剤複合体を形成したDNA高分子を用いて作製したDNA-脂質薄膜にスピロピランをドープすることにより、ホストとして通常用いられているPMMAの場合に比べ数倍以上強い蛍光を観測し、同時にスピロピラン固有の顕著なホトクロミック効果を観測した。昨年度の研究により薄膜形成条件およびドーピング条件が明らかとなったので,15年度は導波路作成と信号処理機能の確認を行った。導波路作成に関しては通常のドライエッチングを試みたが,前後の工程で不可欠なウェットプロセスでのDNA膜への水の吸着が原因と考えられる部分剥離が生じ,導波路の形成が困難であることが判明した。この問題への対応は製造工程の抜本的見直しが必要なことから,完全ドライ工程化とパシベーション処理の検討を行った。その結果,剥離原因の特定に至るまでに時間がかかり残念ながら年度末までには見直しが終了できなかった。一方,デバイス特性の面から,スピロピランのホトクロミズムに起因する構造変化により配向膜での屈折率異方性が生じる結果,入射光の偏波面が回転し,それがスピロピランのドープ量と関係していることが見出された。この現象は信号処理における偏波多重制御や演算に用いることができる可能性を示唆するものであることから,この結果を2004年1月のSPIE国際会議に発表した。今後は,偏波回転のメカニズムの探求を行い,ドーピングの最適化や速度の向上を図る必要がある。
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