平成15年度の実績: [SiをドープしたInNのシュブニコフ・ドハース振動]独立行政法人通信総合研究所無線通信部門の東脇正高氏との共同研究でInNにSiをドープする技術を開発し、結晶品位を落とすことなくキャリア濃度2×10^<18>cm^<-3>、移動度1400cm^2V^<-1>s^<-1>から1.5×10^<19>cm^<-3>、移動度1000cm^2V^<-1>s^<-1>の電子濃度をもつInNを作成することに成功した。これらの試料は0.5Kまでの温度範囲で抵抗の異常を示さず、超伝導にはならなかった。しかし5×10^<18>cm^<-3>以下の濃度のInNにおいてシュブニコフ・ドハース振動を親測することに成功した.この結果InNの電子構造は全体として球状のフェルミ面を持つが、a-b面内では電子密度が3倍程度増加することが分かった。このことから超伝導の実現には適当な電子濃度が必要であり、電子濃度の増加とともに電子構造が異方的になることが分かった。 [siをドープしたInNの光学物性]上記InNを用いて、赤外反射測定、ラマン散乱測定を行い、今まで不明であったInNの電子構造を光学的に理解することが出来た。a-b面内の赤外反射にはプラズマ振動が観測され、面内で振動する光学フォノンと線形に相互作用し、その振動数から面内電子の有効質量が0.085m_0であることが分かった。c-軸方向に振動する光学フォノンはこのプラズマ振動と非線形に相互作用し、Fano効果を示すことがラマン散乱の実験より明らかになった。このことはInNは面内では普通の極性半導体であるが、c-軸方向では結晶性が乱れており、長距離のクーロン力が働かなくなっていることを意味する。 以上の実験結果を第5回ナイトライド半導体国際会議(2003年奈良)と平成15年春の応用物理学会(神奈川大学)にて報告した。また論文を作成し報告した。
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