研究概要 |
本研究では,Ni-Znフェライト・SiO_2複合体を用いた金属板を裏打ちした超広帯域吸収中心周波数を有する電磁波吸収体の開発単層型電磁波吸収材料の開発および評価を行ったのので報告する.B_2O_3を添加することにより密度および硬度が大きくなるが導電率が大きくなる.導電率が増加すると高周波領域における電磁波吸収特性は劣化する.導電率を小さくするためにCoO, NiOおよびMnCO_3の添加が有効であることがわかった.NiOはCoOと同様に透磁率が低下したが,MnCO_3の添加による透磁率の低下はほとんどなかった.NiOあるいはMnCO_3を15wt%添加することで,密度,硬度を減少させることなく6GHz付近まで-20dB以下の吸収を示す複合体の作製が可能であることがわかった.特にMnCO_3を15wt%添加した場合、試料の厚みを変えるだけで吸収中心周波数を数百MHzから6GHzまで変化可能であることがわかった. 電磁波吸収材料の試料厚と抵抗皮膜の膜厚を制御することで複合体の組成を変化させることなく所望の周波数領域で-20dB以下の吸収を示す複合体の作製が可能であることがわかった.NiOあるいはCoOを添加した複合体電磁波吸収材料にITO薄膜を付けることで,組成を変化させることなく試料厚と抵抗皮膜の膜厚を制御することにより-20dB以下の吸収を示す吸収中心周波数を低周波側に移行させることが可能であることがわかった. Ni-ZnフェライトとSiO_2の超微細粉を用いた複合体の吸収特性は,通常の平均粒径(約29mm)を持つSiO_2を用いた複合体に比べて低周波数領域で良好な吸収特性を示した.Ni-Znフェライトの超微粒子と通常の平均粒径を持つSiO_2との複合体の粒径依存性は孤立モデルを用いたシミュレーションにより評価することが可能であることがわかった.シミュレーションにより,Ni-Znフェライトの超微粒子に通常の平均粒径を持つSiO_2を80mol%混合した複合体において,電磁波吸収特性は単一組成において試料の厚みを変化させることで,1GHz以上の高周波側で-20dB以下の吸収特性を示すと同時に1GHz以下においてもNi-Znフェライト単体と同様の幅広い吸収帯域幅が得られることがわかった.
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