希薄磁性半導体の光磁気特性について、三元系CdMnTeを改良した四元系CdMnCoTe薄膜のファラデー特性の向上を同じ四元系CdMnFeTe薄膜と比較しつつ検討し、CdMnCoTe膜の磁気光センサへの応用を図るための研究を進めた。 磁界光センサへの希薄磁性半導体膜の応用形態としては、膜面垂直入射の空間光を用いる場合と膜面内の導波光を用いる場合とがある。空間光を用いる磁気光センサに希薄磁性半導体CdMnCoTe膜を応用する場合の技術的な問題は次の点である。 (1)石英基板の正のファラデー回転と希薄磁性半導体膜の負のファラデー回転の関係把握。 (2)空間光によるS/Nの充分な磁気光信号の取り出しと、そのための膜の厚膜化(数μm)。 研究の結果、膜面に垂直な空間光(LD光635nm)により、2μm厚の希薄磁性半導体膜のファラデー回転を受光器で直接捕らえることが出来た。これは希薄磁性半導体膜の磁気光センサへの応用を図るための基盤的事項となる。CdMnTeは磁化率χがキュリー・ワイスの法則に従うとされるが、CdMnCoTeも同じ法則に従うことを実験的に確認した。室温でのファラデー回転θ_Fの向上はこのχの増加に、またそのχの増加の機構はMn^<2+>とCo^<2+>の局在スピン間の磁気的相互作用にあると推測される(θ_F∝Kχ)が、もうひとつ有力な因子と考えられる振動子強度の量子論的把握がまだ進んでいない。結晶基板上にDMS膜をエピタキシャル成長させるMBE技術を用いた希薄磁性半導体膜の光磁気特性に対するより進んだ検討と併せて、「四元系CdMnCoTe膜の磁気光特性向上の機構」を今後より明確にする計画である。特性向上に関する研究結果は、2003年4月にIEEE Intermag Conference(Boston)、また2004年1月にJoint MMM-Intermag Conference(Anaheim)で発表したが、これまでには無い高いファラデー回転特性を持つ四元系希薄磁性半導体の磁気光センサへの応用と共に、我々には「ファラデー回転特性向上機構の明確化」も求められているので、今後の研究により、それに応えるつもりである。
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