研究概要 |
気体吸着による測定が困難な0.7nm以下の超微細孔を有する活性炭の超微細孔を高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)により観察した。活性炭のようなランダムな組織のHRTEM観察では,一般に焦点が合わせ難く,定量的解析が難しいため,本研究ではアモルファスカーボンフィルムをHRTEMにより観察し,正焦点からのずれ(Δf)を利用して実際の対物レンズの位相差コントラストの伝達関数(以降,伝達関数と略記)を検証し,超微細孔を有する活性炭の細孔分布の測定法を検討した. HRTEMはJEM2010FEFを用い,加速電圧200kVで試料を観察し,伝達関数の計算には電子線照射角等による減衰特性を考慮した.カーボン支持膜付汎用TEMグリッドのアモルファスカーボンフィルムをいくつかのフォーカス条件で観察した後,前年度に検討した手法,2次元高速フーリエ変換(2D-FFT)を施してパワースペクトルを求め,伝達関数と比較した.また,KOH賦活して製造された超微細孔を有する活性炭をHRTEM,JEM2010FEFにより,加速電庄200kV,アンダーフォーカス値Δf=-60nmの条件で,電子線量と像を形成する輝度の線形性がよい内蔵CCDカメラにより観察した. アモルファスカーボンフイルムのHRTEM像から得られたパワースペクトル(PWS)をその中心点について回転方向に180°積分し,強度を対数表示した結果とΔfが同条件で計算したHRTEMの減衰特性を考慮した伝達関数は,曲線のピークと谷の位置関係から測定結果と計算結果がほぼ一致していることがわかり,本手法により伝達関数は正しく計算されていることが確認された.また,HRTEMと画像処理を用いた本手法は,気体吸着法では測定の難しい超微細孔構造の解析に有効であることがわかった.
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