研究概要 |
細孔径の異なる4種類の試料(3種類の活性炭および分子篩機能のある微細な孔を有する試料)について吸着特性をMicromeritics (ASAP 2010, USA)を用い,N_2により77Kで測定した.さらに他機関の協力を得て,同試料の加圧下(最大4MPa)でのCO_2吸着により求めた細孔分布と高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)による解析結果を比較した.実験で用いたHRTEMはJEM2010FEF(加速電圧200kV,日本電子製)で,球面収差係数C_S=1.6mmとして,正焦点からのずれΔfをJEM2010FEFの最適アンダーフォーカス(Scherzer focus)条件の-60nmから-255nmの間で伝達関数を計算し,HRTEMの観察範囲を確認した.これらの結果を考慮して,上記の試料についてΔfを変化させてHRTEMにより観察を行った。観察した像に2次元高速フーリエ変換(2D-FFT)を施してパワースペクトルを求めた.細孔径の異なる4種類の試料についてN_2による吸脱着等温線から分子篩機能のある微細な孔を有する試料はN_2がほとんど吸着されず,N_2を通すことのできる細孔が外部に通じていないことがわかった。CO_2測定による細孔分布範囲の関係から微細な孔を有する試料についてはΔf=-60nm,そのほかの試料についてはΔf=-255nmにおけるTEM像について画像処理した.伝達関数の計算からΔf=-60nmおよびΔf=-255nmのHRTEMの観察範囲は,それぞれ0.92〜0.24nm,1.92〜0.89nmと推定され,各試料のパワースペクトルの強度分布もこの範囲に現れている.パワースペクトルの各ピークは細孔を含む組織の強く現れる間隔に対応しており,吸着が行われる空間は細孔壁の厚さを考慮に入れると,HRTEMによる解析結果とCO_2の吸着による測定結果にある程度関連性が見られた.CO_2の吸着による測定法およびHRTEMによる細孔測定法は,いずれも確立したものではないが,それぞれの異なる手法を相補的に用いることにより,これまで必ずしも解明されていない活性炭の超微細孔の構造について,解析手法を進展させることができた.
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