研究概要 |
金属-酸化物同時電析法というウェットプロセスの一手法を用いて,優れた磁気特性を有する金属-酸化物系ナノグラニュラ薄膜の作製に取り組んだ. まず,これまで得られているFe-Ce-Oグラニュラ薄膜の磁気特性を改善するために,パルス波形電析により,ナノ構造の制御を試みた.この方法では,酸化物の析出する電位と,金属と酸化物の両方が析出する電位を交互に繰り返すことでナノ構造が制御できると考えられる.そこでまず,パルス波形電析を行うために,ミリ秒単位の任意波形パルスが出力できるパルス電析システムを構築した.次に,このパルス波形を用いて,グラニュラ薄膜中の金属微粒子サイズの制御を試みた.磁性金属と酸化物のそれぞれを独立にパルス電析によって析出させた結果,パルスの周期や電位などの電析条件が,金属や酸化物の析出におよぼす影響を調べることができた.その結果,通電時間を制御するとで,孤立した磁性粒子を析出することに成功した.しかし,得られた磁性粒子の粒径はマイクロメートルオーダであり,ナノ構造の制御には至らなかった.そのため,パルス電析によって析出したグラニュラ薄膜の磁気特性は直流電流の場合と差異が無かった.今後,さらに詳細な析出条件を調べる必要がある.次に,グラニュラに含まれる磁性金属を,これまでのCo単体,Fe単体から,合金化するためにFe-Pt合金の電気化学的な析出を検討した.その結果,Fe-Pt薄膜を電析法によって析出させることに成功した.さらに,これまでの成膜方法以外に,金属超微粒子をあらかじめ化学的に作製し,酸化物薄膜形成中に膜中に混在させる方法も考えられる.そこで,アルコール還元法と呼ばれる手法を用いてFe-Pt超微粒子の作製を試みた.その結果,数10nmの粒径のFe-Pt微粒子を得ることができた.
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